アパートやマンションといった賃貸物件のオーナーにとって、ペットの飼育を許可するにあたってはメリットとデメリットを十分比較したうえで判断しなければなりません。
また、ペットの飼育を許可することで、原状回復費用などのコスト負担も気になるところです。
そこで本記事では、賃貸物件のオーナーの立場から見た、ペット可賃貸物件のメリットとデメリット、契約時の注意点などを紹介します。
ペット可賃貸のメリット
賃貸住宅においてペットの飼育を許可することで、オーナーにとってはどのようなメリットがあるのでしょうか。
空室対策
賃貸物件の場合、犬や猫といったペットを飼育できる物件の数は限られています。
飼い主にとってペット飼育可の賃貸物件はありがたい存在であり、これまで空室に悩んでいた賃貸物件であっても、ペット飼育を許可することで空室が早期に埋まる可能性があります。
長い入居を期待できる
ペットの飼い主が引っ越しを検討する場合、必ずしも好条件の賃貸物件が見つかるとは限りません。
また、ペット可の物件は敷金が高額で原状回復費用もかかる傾向があります。
そのため引っ越しせずに現在の物件へ住み続けたほうが経済的と判断され、長期間にわたって入居してもらえる可能性があるでしょう。
賃料などを高く設定できる
ペットの飼育可という条件は物件を貸し出すうえで大きな魅力でもあり、同条件の賃貸物件に比べて賃料などを高く設定しても入居希望者が現れる場合があります。
オーナーから見れば、高い家賃収入を得られるメリットが期待できるでしょう。
立地条件が悪くても入居者が決まりやすい
賃貸物件を貸し出しても、立地条件が悪いと入居希望者がなかなか現れないことも。
しかし、たとえば駅から多少距離があったとしても、ペット可という条件が提示できれば入居希望者が現れ、近くにペット可の物件がなければ即決することもあるでしょう。
ペット可賃貸のデメリット
ペットの飼育を許可することは、オーナーにとって多くのメリットがある一方でデメリットも存在します。
原状回復費が高くなる
ペットを室内で飼育する場合、避けて通れないのがにおいや内装の破損です。
きれいに清掃をしても、ペットを飼育していた部屋では壁紙ににおいが染み付いてしまい、なかなか消し去ることができません。
また、壁や柱を爪で引っ掻いたりかじられてしまうと、内装材そのものが傷んでしまうこともあるでしょう。
その結果、退室時にクロスやフローリングの張替え、柱の補修といった作業が必要になり、高額な原状回復費を請求しなければならなくなります。
借主にとっては想定外の費用となることも多く、トラブルにつながるリスクも考えられます。
近隣トラブルのリスク
ペットの鳴き声や足音などが近隣の部屋に伝わってしまい、それが原因で入居者同士のトラブルにつながるリスクもあります。
トラブルに耐えかねた住民が引っ越しをしてしまうと、オーナーの家賃収入にも影響を及ぼしてしまうでしょう。
入居条件のトラブルが発生するリスク
当初はペットの飼育が禁止されていた賃貸物件であったにもかかわらず、その後ペットの飼育を許可してしまうと、入居条件を巡ってトラブルに発展するリスクも考えられます。
たとえば、すでに居住している入居者のなかには、動物が苦手であったりアレルギーがあるためその物件を選んだという方もいるかもしれません。
また、ペットの飼育が可能な部屋とそうでない部屋が同じ家賃であることに納得できないといった反発を招くことも考えられるでしょう。
関連記事:ペットが過ごしやすい環境作りとは?リフォーム・リノベーションのポイント8選
オーナーが原状回復の退去費用を負担しなければならない理由
賃貸物件では室内のフローリングやクロス、畳などが経年劣化したり、使用状況に応じて汚損・破損していくことがあります。
国土交通省では、「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」を公開しており、このなかで経年劣化や入居者の通常使用の範囲内で生じた汚損や破損については、オーナー側で原状回復費用を負担するのが望ましいとしています。
このガイドラインは法的拘束力があるものではありませんが、多くの不動産仲介業者や管理会社ではこの指針に沿って運用しているのが現状です。
ただし、上記でも紹介した通りペットの飼育可能な賃貸物件で、においが染み付いたり内装が破損していた場合には通常使用の範囲内とは見なされず、オーナー側ではなく入居者側の負担としているケースも少なくありません。
関連記事:ペットリノベーション業者の正しい選び方|ペットにとって危険な室内の環境について解説
オーナーが負担する原状回復の平均費用額は?
経年劣化や通常使用の範囲内で原状回復が必要となると、オーナーとしてはどの程度の費用がかかるのか不安に感じるでしょう。
平均的な原状回復費用は以下の通りです。
- ①ハウスクリーニング:1.5〜3万円程度(1K) 2〜4万円程度(1LDK・2K) 4〜6万円程度(3K・2LDK)
- ②クロス張替え:3.5〜6万円程度(6畳)
- ③フローリング張替え:6万円程度(6畳)
上記はあくまでも目安であり、使用するクロスの材料や床材によっては追加料金が発生する可能性があります。
また、ハウスクリーニングについても、特殊な薬剤による清掃が必要な場合にはさらに高額となるケースも少なくありません。
ペット可賃貸における契約時の注意点
賃貸物件においてペットの飼育を許可する場合、トラブルを避けるためにも以下のような点に注意が必要です。
敷金・礼金の検討
ペットの飼育にあたっては、におい対策や内装材の原状回復に多額のコストがかかります。
そのため、あらかじめ敷金や礼金を多めに徴収するなどの対策が効果的です。
たとえば、本来の敷金は1ヶ月分だとしても、ペットの飼育を希望する入居者に対しては2ヶ月または3ヶ月分を請求することで、退去時にかかる原状回復費用に充当することができます。
退去時にかかる費用および内訳の明確化
賃貸物件のトラブルで特に多いのが退去時にかかる費用です。
数万円、数十万円といった費用を請求せざるを得ないケースもあり、入居者からしてみれば想定外に高額な費用であるため不信感を抱かれることも。
このようなトラブルを防ぐためにも、契約の時点で退去時にかかる費用およびその内訳を明確化し、契約書などにも明記しておきましょう。
使用規則の明示と飼育承諾書の提出
ペットの飼育にあたって近隣住民とのトラブルを防ぐためにも、アパートやマンションの使用規則を明示し、そのうえで飼育許諾書を提出してもらいましょう。
使用許諾書のなかには、以下のような内容を記載してもらうのが一般的です。
- 1.ペットの種類・名前
- 2.性別
- 3.年齢
- 4.避妊・去勢手術の日時
- 5.ワクチンの接種日時
- 6.しつけの状況
特に、ほかのペットとのトラブルを未然に防ぐためにも、避妊・去勢手術やワクチンの接種を入居条件とするケースも少なくありません。
関連記事:ペットリノベーション業者の正しい選び方|ペットにとって危険な室内の環境について解説
賃貸物件をペットリノベーションするメリット
ペットの飼育を許可するうえでは、賃貸物件をペット用にリノベーションすることも有効な対策のひとつです。
飼い主が安心して入居できる
ペットの飼い主は、自分自身が住みやすい環境であることはもちろん、ペットにとっても安心して暮らせる環境であるかを重視します。
ペットの飼育に適した環境にリノベーションされていれば、物件そのものの魅力が向上し多くの飼い主から支持を得られるでしょう。
ケガや事故のトラブルを未然に防止できる
人間にとっては住みやすい環境でも、ペットの視点に立ってみるとさまざまな危険が潜んでいることもあります。
たとえば、フローリングが滑りやすくてペットが脱臼してしまったり、ペットに有害なワックスが使用されていて健康被害が生じたりなど、さまざまなことが原因でトラブルに発展するリスクがあるでしょう。
これらは原則として飼い主の責任ではありますが、ペットリノベーションを行うことでトラブルそのものを抑止できる可能性もあります。
テイストはペットを飼っている人を考えたペットリノベーションを提供
飼い主とペット両方にとって魅力的な賃貸物件をつくるためには、ペットリノベーションに対応した専門業者へ相談するのがベストです。
ペットを飼ったことがなかったり、ペットに関する知識が乏しいと、どのような環境が理想なのか分からないことも多いでしょう。
テイストはペットリノベーションに対応した専門業者であり、これまで一般住宅から賃貸住宅までさまざまな物件のリノベーションを行ってきました。
予算や目的に合わせた最適なリノベーションプランを提案できるため、ぜひ一度ご相談ください。
まとめ
賃貸物件においてペットの飼育を許可することは、オーナーにとって空室対策や家賃収入の増加などのメリットが見込めます。
しかし、その一方で原状回復費用が高額になったり、近隣トラブルの原因になることも。
メリットを最大化するためには、飼い主とペット両方にとって住みやすい環境を整えることが重要です。
そのためのひとつの方法として、賃貸物件のペットリノベーションを検討してみましょう。